奈良新聞掲載記事集

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

薬用植物のお話

   『柿が赤くなると医者が青くなる』 秋を代表する果物で、奈良県内でも多く生産されている柿に関することわざです。秋は暑さも落ち着き快適な気候であり、また果実にはビタミンCなどの栄養素が多く含まれるため体調を崩す人が少なくなる、との意味があるようです。そんな柿ですが、果実ではなく、ヘタの部分が生薬「柿蔕」(シテイ)として、しゃっくり止めの漢方薬“柿蔕湯”に使われていることはご存じでしょうか。今回は実は身近な生活にある薬用植物について触れたいと思います。
 まず、薬用植物とは、生薬の原料となる植物のことで、植物の全体もしくは一部(根や樹皮、種子など)が調製されたものが生薬として用いられています。漢方薬は、この生薬を組み合わせて処方されており、前述の柿蔕湯では柿蔕と生姜(ショウキョウ)、丁子(チョウジ)の3種の生薬が原料となっています。生姜は料理でもよく使われ体が温まるショウガ、丁子はカレーなどに用いられるスパイスのクローブのことで、ともに嘔吐抑制、健胃などの作用があります。
 ただ、やはり“薬用”植物の名前のとおり、医薬品としてのみ取り扱うことができ、食品としては利用できないものもあります。医薬品なのか、食品なのかの判断は国が示す「食薬区分」によってなされます。県内でも栽培されているシャクヤク(根)などは「専ら医薬品として使用される成分本質(専医)」で医薬品の規制対象になりますが、生姜や丁子などは「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(非医)」に分類され、食材として日頃から口にしているものになっています。
 薬用植物のなかで非医には、イネ(生薬名:コウベイ。玄米のこと)やゴマ、トウガラシ、ドクダミ(生薬名:ジュウヤク)などがあり、日頃から口にしているものにも、別の呼び方で実は薬用植物というものもあるので、身近な生活のなかでの発見を楽しんでみて下さい。

ヤマトトウキの食用となる葉生薬となる根

【豆知識】

漢方が日本に伝来したのは、5~6世紀頃とされており、奈良県は古くから薬用植物との関係が深い地域になります。現在でも、県内ではトウキ、シャクヤク、ミシマサイコ、アマチャなどの薬用植物が栽培されています。
 トウキについては、ヤマトトウキが県内各地で栽培されています。トウキはセリ科シシウド属の多年生の植物で、1年目に育苗し、2年目に生薬となる根が収穫されます。トウキ(根)は血行改善作用などがあり、古くから漢方薬の原料となっており、“専医”に分類されるので、食品には利用できません。しかし、トウキ葉は平成24年に“非医”に分類されたことにより、食品として利用されるようになってきました。トウキ葉は、5月から11月頃に収穫され、セリのような特徴的な風味を活かして、スープや肉料理、調味料や酒類など味のアクセントとして使われています。

 

 

 

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。